日本においてはバイリンガルは一般的に知的な印象を与えますが、本当にバイリンガリズム(二言語併用)は知能に良い影響を与えるのでしょうか?それを確かめた研究論文が出たので紹介します。ここで言う知能は単に頭が良いと言うことではなく、『各個人が目的的、合理的に行動し、自分の環境を能率的に処理する総合的な能力』のことです。
カナダのオンタリオ州にあるウェスタン大学で行われた研究で、前頭または前頭葉回路の活動と関連している推論、記憶、計画、視空間能力、注意力等の12のオンラインによる認知テストで、研究に登録した40,105人の参加者のうち11,213人(年齢層=18~87歳)が全ての質問に回答しました。そのうち、11,041人の能力を評価しています。バイリンガルの人々は1つのテストのみでモノリンガルの人々よりも有利であり(モノリンガルは4つのテストでより優れていました)、潜在的な交絡バイアスを取り除くと、これらの影響はすべてなくなったという結果でした。
また、この研究ではバイリンガルであることが加齢による影響を防いでいるかどうか、すなわち認知機能の低下をモノリンガルより抑制しているかも検査されましたが、結論をいうと、バイリンガルであることと、一般的な精神能力向上の関連性は証明することはできませんでした。
ただし、認知上の利点がないにしても、雇用やライフスタイルでバイリンガルであることの利点は大きいと思われます。
Nichols, E. S., Wild, C. J., Stojanoski, B., Battista, M. E., & Owen, A. M. (2020). Bilingualism Affords No General Cognitive Advantages: A Population Study of Executive Function in 11,000 People. Psychological Science. https://doi.org/10.1177/0956797620903113
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