肌の保湿に重要？AQP3に関して

はじめに
AQPとは？
AQP3とは？
水チャンネルとは？
AQP3と肌乾燥、創傷治癒の関係
加齢に伴う皮膚の乾燥とアクアポリンの関係
まとめ
参考

はじめに

アクアポリン 3（Aquaporin 3：AQP3）は主に皮膚のケラチノサイトに存在する水チャネルで、皮膚の保湿のみならずケラチノサイトの遊走にも関わることが示されており皮膚の保湿に置いて非常に重要なことが知られ始めています。

AQPとは？

体重の60％は水分と言われているように非常に水は生体にとって重要なものです。アクアポリンは脊椎動物、無脊椎動物、微生物、植物を含むすべての生物に存在し、水を通す働きで多くの生理的な機能や病気に関与している水チャンネルです。哺乳類では13のアクアポリンが発見されており、ヒトでは脳や眼、気管支、肺、肝臓、胃、膵臓、腎臓、大腸、膀胱、小腸、生殖器そして皮膚が発現部位として知られている。その中でも、経上皮水輸送ではAQP2、 AQP3 および AQP4が担当することが知られています。
AQP3 は側底部にAQP4と共に存在することが知られています。1)

AQP3とは？

AQP3は表皮の基底層および有棘層のケラチノサイトでも強く発現されています。2).3)
AQP3は皮膚の水分補給を促進する水およびグリセロールの輸送体として機能し、創傷治癒中の細胞移動にも関与している可能性があるとされており、肌の保湿や乾燥に関して非常に重要な役割を果たしている水チャンネルと考えれれています。

水チャンネルとは？

水チャンネルは英語ではAquaporin（アクアポリン）とも呼ばれという、タンパク質でてきた特殊な水を透過する孔です。ヒトの赤血球膜に存在することが、1992年にPeter Agre博士らの研究グループによって明らかにされました。細胞内に水を取り込んだり、細胞から水を排泄する働きをしていると考えられています。

AQP3と肌乾燥、創傷治癒の関係

AQP3欠損マウス（意図的にAQP3が発言しないようにしたマウス）では表皮の角質層の水分含量が減少しているため、AQP3が皮膚の水分補給において重要な役割を果たしていると考えられています。また、AQP3 欠損マウスは、急激にバリア機能が破綻した後にバリア回復の遅れもあることが確認されています。
またAQP3 は創傷治癒中の表皮における表皮細胞の移動と増殖も促進することで創傷治癒における重要な役割を果たしていることもわかってきました。
4).5).6)

加齢に伴う皮膚の乾燥とアクアポリンの関係

加齢に伴い皮膚機能は低下し、これには真皮水分量の減少が関係していることが知られていますが、真皮水分量の減少には、ヒアルロン酸、セラミド、コラーゲン量の減少が関与していることも知られています。これらは加齢の影響で、様々な化粧品や医薬品でこれらを補う方法が考えられていますが、劇的な影響を与えるものではありませんでした。
重要なのこととしては、加齢に伴いAQP3 の量も減少することがわかってきました。なので、もしかすると、皮膚における AQP の発現レベルを増加させる物質を発見することが出来たら加齢性の皮膚乾燥を劇的に改善することが可能かもしれません。

まとめ

AQPは体内における水分量調整で重要な役割を果たしています。また、皮膚ではAQP3が重要であり、加齢に伴うAQP3の減少が加齢性の皮膚乾燥に重要な役割を果たすことがわかってきました。まだ、はっきりと減少したAQP3を増加させる物質はわかっていませんが手軽に摂取できるものが発見されれば加齢性の皮膚乾燥を劇的に改善させることは可能かもしれません。

参考

1.Knepper, M.A.; Kwon, T.-H.; Nielsen, S. Molecular physiology of water balance. N. Engl. J. Med. 2015, 372, 1349–1358.

2.Sougrat, R.; Morand, M.; Gondran, C.; Barré, P.; Gobin, R.; Bonté, F.; Dumas, M.; Verbavatz, J.-M. Functional expression of AQP3 in human skin epidermis and reconstructed epidermis. J. Invest. Dermatol. 2002, 118, 678–685.

3.Frigeri, A.; Gropper, M.A.; Umenishi, F.; Kawashima, M.; Brown, D.; Verkman, A.S. Localization of MIWC and GLIP water channel homologs in neuromuscular, epithelial and glandular tissues. J. Cell Sci. 1995, 108, 2993–3002.

4.Hara-Chikuma, M.; Verkman, A.S. Aquaporin-3 functions as a glycerol transporter in mammalian skin. Biol. Cell 2005, 97, 479–486.

5.Ma, T.; Hara, M.; Sougrat, R.; Verbavatz, J.M.; Verkman, A.S. Impaired stratum corneum hydration in mice lacking epidermal water channel aquaporin-3. J. Biol. Chem. 2002, 277, 17147–17153.

6.Hara-Chikuma, M.; Verkman, A.S. Aquaporin-3 facilitates epidermal cell migration and proliferation during wound healing. J. Mol. Med. 2008, 86, 221–231.

7.Ikarashi, Nobutomo, Risako Kon, Miho Kaneko, Nanaho Mizukami, Yoshiki Kusunoki, and Kiyoshi Sugiyama. 2017. “Relationship between Aging-Related Skin Dryness and Aquaporins” International Journal of Molecular Sciences 18, no. 7: 1559. https://doi.org/10.3390/ijms18071559

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