運動と美肌
運動には様々運動・トレーニングがあるが、有酸素運動(AT)が美肌(美しい肌)に有効であるとという論文は今まで発表されていた(皮膚の老化に対する効果的なアンチエイジング戦略として)が、筋力トレーニングが有効という証拠は今まで発表されていなかった。
今回、立命館大学スポーツ健康科学部の藤田聡教授らがScientific Reportsに発表した論文では筋力トレーニングが有効であるという報告がされている
今回、発表された論文を見てみると、筋力トレーニンの中でもレジスタンストレーニング(レジスタンス運動:RT)の効果に関して言及されている。レジスタンストレーニングとはレジスタンス運動とは、筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動のことを指している。
前提として、運動・トレーニングはサイトカインとホルモンの循環レベルを変化させ、これらの変化は運動の老化防止効果に関与している可能性があることが知られており、その中でも今回は筋力トレーニングの効果に関して主眼が置かれている。
論文内容
今回の論文では、健康ではあるが座りがちな中年女性61名を対象に16週間の介入を行い、皮膚老化に対する有酸素運動とレジスタンス運動の効果を比較している。そのうち、56 人の女性のデータが分析に利用されている(5人は研究途中で脱落)。
血液サンプル中のさまざまな因子の測定され。真皮細胞外マトリックス関連遺伝子の発現等も検査している。
トレーニングは、参加者が目標負荷(AT の場合は最大心拍数の 65 ~ 70%、RT の場合は最大反復回数の 75 ~ 80% を達成していることを確認)している。
この研究の結果からは、皮膚の弾力性と上部真皮構造が、両方のグループで大幅に改善され、RTグループでは真皮の厚さの増大が見られた。
運動の皮膚に与えるアンチエイジング効果を解明するために、16週間のトレーニング介入の前後に安静時に採取した血漿を培養NHDFに添加し、皮膚細胞外マトリックス遺伝子の発現を定量化した。どちらのグループでも、コラーゲン(COL3A1、COL6A1、COL14A1)、ヒアルロン酸合成酵素2(HAS2)、プロテオグリカン(デコリン[ DCN ]、バーシカン[ VCAN ]、コンドロイチン重合因子[ CHPF ])は、トレーニング前と比較してトレーニング後で増加していた。AT後は、COL1A2、COL5A1、COL12A1などの他のコラーゲン遺伝子の発現が増加し、RT後は、ビグリカン(BGN)やコンドロイチン硫酸シンターゼ1(CHSY1)などの他のプロテオグリカン関連遺伝子の発現が増加していた。
また、研究ではRTによって、CCL28、N,N-ジメチルグリシン、CXCL4のレベルの低下とそれに伴う真皮BGN発現の増加によって真皮の厚さを増加効果が誘発されることを示唆している。
しかしながら、運動トレーニング(AT、RTともに)が肌のアンチエイジングにどのような経路を通して有効性を発揮しているのかは解明されなかった。
まとめ
有酸素運動も筋力トレーニングも皮膚の弾力性と上部真皮構造の改善効果が今回確認されているまた、RTいは老化によって一般的には薄くなるとされる真皮の厚さを改善することがわかった。
皮膚のアンチエイジングにとって飲み薬を飲んだり、塗り薬を塗ったり、紫外線を避けたりすることは重要であるが、中高齢期の筋力低下や運動能力低下による健康全般の問題解決を考えるのならば運動も美肌にとって欠かすことはできない要素である可能性が高い。
参考文献
Nishikori, S., Yasuda, J., Murata, K. et al. Resistance training rejuvenates aging skin by reducing circulating inflammatory factors and enhancing dermal extracellular matrices. Sci Rep 13, 10214 (2023). https://doi.org/10.1038/s41598-023-37207-9
Slominski, A. & Wortsman, J. Neuroendocrinology of the skin. Endocr. Rev. 21, 457–487 (2000).
Crane, J. D. et al. Exercise-stimulated interleukin-15 is controlled by AMPK and regulates skin metabolism and aging. Aging Cell 14, 625–634 (2015).
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