はじめに
少し前の発表ですが、アメリカでUber Healthが処方薬のデリバリーをはじめたのでその辺りのことをまとめたいと思います。
Uberのサービス拡大に関して
2020年8月20日にUber Healthがサービスを拡大し、シアトルとダラスでの医薬品デリバリーを開始しました。これは、COVID-19の流行により処方箋を受け取るために薬局に行くことが困難な場合を想定してサービスが設計されました。Uber Direct(利用者は選択した小売店から注文して、商品を非接触で玄関先までUberのドライバーや配達人が商品を届けるECサイトとデリバリーを組み合わせたサービス)をオンデマンドの処方薬デリバリープラットフォームNimbleRxと統合し、必要な人への薬のデリバリーを支援する仕組みで、配達はUberのドライバーや配達人が行います。アメリカでUberは、Uber Connect という個人間の配送サービスも展開しており人や物の総合的な輸送サービスを行なっています。
この後は、日本の状況に関して書いていきたいと思います。
日本の状況
日本ではUberと言えばUber Eatsがメインで、ほとんどのUber Eats 配達パートナーは自転車かバイクで行なっていることが多いと思います。アメリカではUberのドライバーは人も物も運びますが、日本では国土交通省が「貨客混載を通じた自動車運送業の生産性向上について」の中で、
自動車運送業の担い手を確保するとともに、人口減少に伴う輸送需要の減少が深刻な課題となっている過疎地域等において人流・物流サービスの持続可能性を確保するためには、従来の自動車運送事業のあり方とは異なる新しい事業展開を可能とし、その生産性向上を図っていくことが必要
貨客混載を通じた自動車運送業の生産性向上について
としていますが、これまた国土交通省が「旅客自動車運送事業者が旅客自動車運送事業の用に供する事業用自動車を用いて貨物自動車運送事業を行う場合及び貨物自動車運送事業者が貨物自動車運送事業の用に供する事業用自動車を用いて旅客自動車運送事業を行う場合における許可の取扱い及び運行管理者の選任について」中で運送を行う区域を以下の様に定めています。
過疎地域自立促進特別措置法(平成1 2年法律第15号)第2条第1項に規定する過疎地域又は同法第33条の規定により過疎地域とみなされた区域であって、人口が3万人に満たないもの(以下 「過疎地域」という。)とすること。
旅客自動車運送事業者が旅客自動車運送事業の用に供する事業用自動車を用いて 貨物自動車運送事業を行う場合及び貨物自動車運送事業者が貨物自動車運送事業の 用に供する事業用自動車を用いて旅客自動車運送事業を行う場合における 許可の取扱い及び運行管理者の選任について
このことから、いわゆる過疎地域でのみ認められており、都市部では行うことができず、また、自転車や125cc以下のバイクで配達を行う場合には法的規制はないが、125ccを超えるバイクや自動車を使う場合は貨物自動車運送事業法が適用されるため、事業用自動車としての届け出を行う必要があり、アメリカとはかなり事情が違い、Uber Healthが日本に入って来るとしたらUber Eats 配達パートナーの様な形になると思われます。(タクシー事業者等が行うのは少なくとも都市部では難しそうだが、過疎地域では可能性があると思います。)
日本に置ける薬剤の配送に関して(一般用医薬品)
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律、通称医薬品医療機器等法に配送に関しては従う必要性があります。具体的に言うと、一般用医薬品(第1類・第2類・第3類)はルールに基付き配送することが可能になっています。ただし、スイッチ直後品目(処方せん薬から一般薬になってすぐの薬剤)は要指導医薬品となっており対面での薬剤師による対面販売が原則となっていますが、ビデオ通話等を通して薬剤師と遠隔でやりとりすることで販売は可能であると考えれれています。
日本に置ける薬剤の配送に関して(処方せん医薬品)
一方、処方せん医薬品に関しては、薬剤師法上、調剤を行なった薬剤師は調剤を行なった薬剤に関して服薬指導を行うことが必須で、これは対面で行うことが必要であった為、調剤薬局からの処方せん医薬品の配送に関しては難しかった(服薬指導が薬剤師法に規定されていたので、医師が自家処方した場合は配送が可能と考えられていた)のですが、令和2年度の診療報酬改定で、
(新) 薬剤服用歴管理指導料 4 情報通信機器を用いた服薬指導を行った場合 43点 (月1回まで)
令和2年度診療報酬改定の概要
が新設されたことで、オンラインでの服薬指導が認められたことにより配送が可能な状況が整いました。ただし、麻薬及び向精神薬取締法で規定されている薬剤に関しては配送することはできません。
最後に
Uber Healthが処方薬のデリバリーを開始したという話からだいぶんとずれましたが、日本でも処方せん医薬品の配送を行うことは可能であり、その手段としてUberの様な配送手段を使用することで従来の様な宅配便を使用するのと比較して早く必要な薬剤が患者さんの元に届くという環境を構築することが可能になると思います。
参考
Uber Health expands to include prescription delivery
Moving more of what matters with delivery
貨客混載を通じた自動車運送業の生産性向上について
旅客自動車運送事業者が旅客自動車運送事業の用に供する事業用自動車を用いて貨物自動車運送事業を行う場合及び貨物自動車運送事業者が貨物自動車運送事業の用に供する事業用自動車を用いて旅客自動車運送事業を行う場合における許可の取扱い及び運行管理者の選任について(平成29年8月7日付け国自安第97号、国自旅第128号、国自貨第64号)
https://www.mlit.go.jp/common/001197454.pdf
令和2年度診療報酬改定の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000616842.pdf
薬局における向精神薬取扱いの手引
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/kouseishinyaku_02.pdf
uber eats 配達用バッグ ウーバーイーツ
UBER ウーバー革命の真実 ディスカヴァー・トゥエンティワン

コメント