今更ながらのインドの遠隔医療ガイドライン

doctormedical-technology
Photo by National Cancer Institute on Unsplash

はじめに

日本では2018年3月に厚生労働省から「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が出されて、ある程度の遠隔診療に関するルールが示されましたが、インドでは2020年の3月まで指針が出されておらず、遠隔診療に関してはグレーゾーンのまま様々な事業者(DocsApp等)がサービスを展開していました。COVID-19の流行により日本でも様々な点でオンライン診療の規制緩和(遠隔での初診等)が時限的に行われていますが、インドでもグレーゾーンに関してはっきりとさせる為に2020年3月に「Telemedicine Practice Guidelines」を出して、遠隔診療に関して白黒をつけました。今回はそのガイドラインのポイントと日本との違いに関して書きたいと思います。

注:日本では医師患者間のビデオ通話を用いた遠隔診療をオンライン診療としている。

Telemedicine Practice Guidelines

このガイドラインが作成された背景としては、ナレンドラ・ダモダルダス・モデ首相がCOVID-19の流行によりジャンタ外出禁止令(the Janta Curfew)を出した後に対面診療ではなく遠隔診療を推奨したことがあります。ガイドラインが出されたのが3月25日で、ジャンタ外出禁止令が3月22日なのでその前からインド保健省の中で作成準備が進んでいたのだと思われます。

基本的なところで、医師が遠隔診療で良いか対面診療でなければならないかを判断しなければならないことや、遠隔診療だけでなく遠隔医療相談に関してもこのガイドラインで書かれています。ポイントしては以下に上げる点です。

  1. 患者が医師の資格を確認できる仕組みが必要(医師の登録番号の表示等)
  2. 未成年者へは直接の遠隔診療はできず、親権者の同席が必要
  3. 処方箋の発行は可能であるが、処方できる薬剤には制限がある
  4. AI等のサポートを医師が使用することはできるが、AIが患者の診断や処方することは禁止
  5. 遠隔診療のプラットフォームはインド医療評議会に登録義務がある
  6. 広告を介して患者を遠隔診療に勧誘することは禁止
  7. 診療録の作成と保存義務
  8. 医師患者間の遠隔診療だけでなく、医師医師間や医師と他の医療従事者間の遠隔診療に関しても規定
  9. 電子メール/ファックスなどによる遠隔診療に関しても言及
  10. 遠隔診療における距離の規定はなし

全48ページなので英語ですが意外にすぐ読めると思います。

日本との違い

日本とインドの大きな違いは、現状は処方できる薬剤の違いが一番大きな違いかもしれません。インドでは遠隔診療で処方できる薬剤に関する縛りが日本よりも強くなっています。

また、日本ではオンライン診療で使用可能なビデオ通話システムの規制官庁への登録義務はありませんがインドではそれがある様です。

広告を介して患者を遠隔診療に勧誘することはインドでは禁止されていますが、日本では検索してみると数多くの広告を特に自由診療分野(男性型脱毛症や勃起障害等)を中心にみることができます。ここも大きな違いかもしれません。

医療におけるAIの利用に関する考え方もインドと日本はかなり似たものになっています。例えばアメリカでは、IDx社が開発した「IDx-DR」はAIによる糖尿病性網膜症の自律診断がFDAによって認められていますが、日本やインドでは認めらておらず、医師の判断の参考にすることになっています。

最後に

日本とインドの遠隔医療の現状をガイドラインからみてみましたが、アメリカと比較するとインドと日本の遠隔診療の規制等はかなり近い感じがします。また、日本では現状は時限的に規制緩和されていることもありインドよりもオンライン診療で出来ることが多いと感じました。

自民党では小林史明議員等が遠隔診療の初診に関して昔から押してくれていますし、行政改革推進本部もオンライン診療の初診に関しては賛成の様です。また、菅首相は初診の恒久化に関しても押してくれている様です。医師会の反対もありますが、経団連もオンライン診療恒久化に関しては求めていることもあり、今後どうなるか注目していきたいと思います。

参考

オンライン診療の適切な実施に関する指針

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000201789.pdf

Telemedicine Practice Guidelines

https://www.medianama.com/wp-content/uploads/Ministry-of-Health-Telemedicine-Guidelines-2020.pdf


映像情報メディカル 2020年6月号「特集:遠隔診療で医療が変わる」 産業開発機構

映像情報メディカル 2020年6月号「特集:遠隔診療で医療が変わる」 | 映像情報メディカル |本 | 通販 | Amazon
Amazonで映像情報メディカルの映像情報メディカル 2020年6月号「特集:遠隔診療で医療が変わる」。アマゾンならポイント還元本が多数。映像情報メディカル作品ほか、お急ぎ便対象商品は当日お届けも可能。また映像情報メディカル 2020年6月号「特集:遠隔診療で医療が変わる」もアマゾン配送商品なら通常配送無料。

週刊エコノミスト 2019年09月10日号 [雑誌]  毎日新聞出版

Amazon.co.jp: 週刊エコノミスト 2019年09月10日号 [雑誌] eBook : 週刊エコノミスト編集部: Kindleストア
Amazon.co.jp: 週刊エコノミスト 2019年09月10日号 eBook : 週刊エコノミスト編集部: Kindleストア

コメント